いんたーみっしょん
たすたす。
ヨグムンドが廊下を見回っている。
花台についたほこりを払い、窓ガラスの曇りを拭った。
「最近ノてでぃハ、シツケガナッテマセンネ!
「スコシ言ッテヤラネバ」
憤然と呟く。
ふと、人声に気付いた。
魔王の居間から洩れてくる。
「まーだかなっ(↑)。
「まーだかなっ(↓)」
魔王城のテディ頭は、そっと溜め息をついた。
彼の主は今日も歌っている…
いつ着くのかもわからない客を楽しみに楽しみに、指折り数えて待ちながら。
つまるところ魔王ディナリは、人に夢を見るロマンチストなのだろう。
あるいは、だから魔王になどなったのかもしれない。
「……」
小さな頭を振り、彼は階段に向かった。
紅於とかいう客が、魔王の期待を裏切らないでくれるといい。
そう願いながら階下へおりる。
魔王城の階段は、彼らのために段が低く作られている。
これは、魔王がテディーズを重んじている証ではないだろうか?
ヨグムンドは鼻息を吹いた。
何にせよ、彼はどこまでも主人に従うだろう。
それを忠誠と呼ぶのは、必ずしも正確でないかもしれない。
彼はもちろん、自分が魔王によって魔王のために生み出された存在であることを理解
していたが…
なんと言うか、時々自分の方が年上かのような気がする時があって、
これがその、
まあ、
快感なんである。
てへ。
魔王の身の回りの一切を任され取り仕切って来た『最初の使い魔』は、笑いをこらえ
ようとしてへんな口になった。
(ウッ)
素早く辺りを見回す。
誰にも見られなかったようだ。
やれやれ。
「危ナイトコロダッタ…」
ひとりでにやにや笑っているところなんか見られたら、テディ頭の威厳も地に墜ちてしまう!
それは彼のみならず、彼の主人にとってもうまくないだろう。
中間管理職というのも、なかなか大変なんである。